ヒント(10) 在庫を正しく観る

前回までに、在庫は『仕入れ過ぎ』『作り過ぎ』が原因で増えていくので、在庫を正しく把握して、発注や生産を適正化すべきであること、また、在庫の動きを例外なく記録する為の仕組み作りが大切であるとお話ししました。今回はその続きです。

 

この商品は出荷できるのか

 

甲さんから商品Aの注文が5個入ったとします。倉庫に行きますと、商品Aは10個ありました。この場合、商品Aは、今すぐ出荷できるでしょうか?

 

ここで、「当然、可能だ」と思われた方は少しお待ち下さい。もしかしたら、10個のうち8個は、別の得意先・乙さんへの出荷待ち状態であるかも知れません。この場合、商品Aのうち8個は乙さんに行く予定ですので、甲さんに出荷できるのは2個だけです。

 

目の前に10個あるからといって、その場で5個の注文を受け付けたが、実際は2個しか出荷できない。これでは、後でトラブルになります。

 

よって、在庫の数には『出荷待ち』の分も計算に入れるべきなのです。

 

この注文は断るべきか

 

今度は逆のパターンを考えます。丙さんから、商品Bの注文が6個入りました。倉庫には、商品Bが2個しかありません。この場合、在庫が足らないからと、注文を断るべきでしょうか?

 

もしかしたら、今日の午後、商品Bが10個入荷するかも知れません。すると、午後まで待ってもらえれば、丙さんに商品Bを出荷することができます。これを、「在庫切れです」と断ってしまうと、ビジネスチャンスを逃してしまいます。

 

よって、在庫数は『入荷予定』の分も考慮に入れる必要があります。

 

在庫の数に二種類ある

 

実は、在庫の数には『実際在庫』と『論理在庫』の2つがあります。実際在庫とは、倉庫や店に実際にある在庫数です。論理在庫とは、出荷可能な在庫の数です。先に挙げた例は、実際在庫と論理在庫の違いの喩えです。これを図で示すと次の通りになります。

 

 

業務判断で必要なのは『論理在庫』です。これをしっかり把握できているかどうかで、在庫が適正化できるかどうかも分かれてきます。

 

よって、入荷と出荷だけではなく、

 

・受注(→ 出荷待ち)

・発注(→ 入荷予定)

 

も踏まえて商品の動きを記録して初めて、本当の在庫の数を知ることができるのです。なお、『出荷待ち』は『引当済』と同じ意味です。

 

手作業でやると大変ですが、在庫管理システムなどを活用すれば可能です。ここでITが活躍します。

 

最後に重要なこと

 

経営者が在庫の量を見る場合、在庫数に原価を掛けて計算した、『棚卸資産』で見ることが多いと思います。

 

この場合、視点は『金額』ですが、それだけでは不十分で、『時間』の視点も加える必要があります。

 

どういう事かと言いますと、商品在庫が店や倉庫に留まっている期間も把握する必要があるという事です。

 

いつまでも倉庫に居座る『滞留在庫』は資金繰り悪化と管理コスト増加の主犯格です。ところが、どの商品がどれだけ滞留しているのかを、経営者が知らないケースは少なくありません。

 

そこで、商品の『在庫金額』をその商品の『今月の売上高』で割り算して下さい。計算結果は、その商品の『回転期間』、すなわち『仕入れてから売れるまで何ヶ月掛かっているか』を意味します。回転期間の数字が大きい商品ほど、倉庫に長期間眠っているという事です。

 

毎月の回転期間の変化を見ながら在庫状況を単品レベルで把握し、発注や生産の数とタイミングを適切に判断していくのが在庫管理です。

 

在庫は見るのではなく『観る』ものなのです。

 

(那覇商工会議所・商工ニュース2006 年1 月号掲載)

 

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