ヒント(26) 価格を決める際に意識すべき事

商品やサービスの『価格』とは、自社にとっては『利益の源泉』であり、お客様に対しては『価値の主張』です。『価格』はビジネスをする上で非常に重要なものであり、適当に決めてはいけません。

 

ましてや、お客様(得意先)の言い値で価格を決めてしまう事は、自社の自立精神を放棄する行為です。それは「あなたの存在価値はこの程度だ」と他人から言われて「はい、そうです」と無条件に受け入れるのと同じ事だからです。繰り返しになりますが、『価格』は『価値』を意味します。

 

そもそも、価格設定はそれ自体が単独で行うものではなく、企業活動、とくにマーケティング活動と密接な関連があります。

 

価格を適切に設定するには、(1)コスト、(2)お客様、(3)競合他社の3つをよく知らねばなりません。そこで、これらと価格設定との関連を考察します。

 

(1)コストと価格との関連

 

商品を生産したり仕入れたりするには原価が掛かります。よほど丼勘定でない限り、商品の原価は把握しているでしょう。

 

しかし、それ以外のコストはどうでしょうか?『見えないコスト』まで計算に入れて価格設定をしているでしょうか?

 

まずは、製品を生産する場合の事を考えます。製造原価の計算に減価償却費を入れているでしょうか。入れてないとすると、次世代の設備投資の原資が捻出できなくなる可能性があります。

 

また、既存製品はしばらくすると陳腐化しますので、常に製品改良や新製品開発に取り組んでいかねばなりません。その為の研究開発費が要りますので、それも価格に織り込む必要があります。

 

あとは、流通経費です。お客様を見つけるには多額の宣伝広告費や営業費が掛かります。自社で集客せずに商社や販売代理店に販売を任せる場合(通常はこちらでしょう)は、流通マージンが必要になります。

 

更には、アフターメンテや保証をする為の経費も必要です。

 

製品を生産しない場合でも、『見えないコスト』はあります。自社生産をしないため、他社との差別化要因は製品単体ではなく、サービスや品揃えといったものになります。こういった取り組みには人手が掛かります。人件費は内訳が見えにくいが故に、価格設定の計算から除外されやすいのですが、しっかりと織り込んでおくべきです。

 

こういった事を正確に見積もった上で、価格設定をしていく必要があります。業績が良くない企業は多くの場合、価格を安く設定し過ぎています。

 

(2)お客様と価格との関連

 

商品やサービスの価格を答えるクイズ番組が人気を集めています。あの価格を毎回正確に当てられる人はどれ位いるでしょうか?殆どいない筈です。また、そうでなければ、番組は成り立ちません。

 

ここで大切なのは、お客様の中で、商品やサービスの価値を正確に見抜ける『目利き』の人は少ないという事です。よく、「分かる人には分かる」と言われますが、これは、「分からない人の方が多い」という事です。

 

すると、商品やサービスの価格が妥当かどうかは、お客様の感覚や理解に左右される事になります。そこで、こちらが設定する価格、すなわち価値を、お客様に納得してもらう為の『説明』が必要になります。

 

企業にはお客様に対する『説明責任』があります。これを疎かにすると、実際の価値よりも価値を低く見られます。逆に、お客様への説明を十分に行ない、価値を分かって貰えれば、高くても買ってもらえるのです。お客様ニーズの把握、分かりやすい表示、お客様とのコミュニケーションといった事は、価格設定とは切り離せません。

 

(3)競合他社と価格との関連

 

大抵の商品やサービスは、他社と競合します。お客様にとって、選択肢は複数あるのが通常で、お客様は、その中から一つを選ぼうとします。

 

ここで、似たような商品同士であれば、価格(安さ)を基準に選ぶでしょう。もし、あなたの会社の商品が他社よりも高ければ、お客様は他社商品を選ぶでしょう。

 

しかし、その際に問題なのは、価格が他社よりも高かった事ではなく、『似たような商品』で一括りにされてしまった事です。商品やサービスに個性が無く、『その他大勢』の扱いをされているから、価格競争に巻き込まれるのです。

 

やるべき事は、値下げではありません。商品コンセプトの見直しです。「うちの商品は、○○社の商品とここが全く違う」とお客様に明言できるでしょうか?

 

商品やサービスの価格設定がマーケティング活動全体の一部である事を、十分にご理解頂きたいと思います。

 

(那覇商工会議所・商工ニュース2007 年5 月号掲載)

 

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