ヒント(41) お客様ニーズと企業シーズ

企業は、常に新しい商品やサービスを開発したり、既存商品を改良したりしなければなりません。その際、自社が作りたい商品を作るのか、お客様が求めている商品を作るのか、が問題になります。

 

売る側の視点で「作った商品を如何にして売っていくか」を『プロダクトアウト』と言います。反対に、買う側の視点で「お客様が欲しがる商品を如何にして作っていくか」を『マーケットイン』と言います。

 

今回は、『プロダクトアウト』と『マーケットイン』について考えていきます。

 

良い商品と欲しい商品は違う

 

まず、プロダクトアウトについて考えます。これは、「自社が作りたい商品を作って売る」という経営スタンスです。

 

この考え方の問題点は、買う側の視点が抜け落ちている点です。よくあるのが、「商品の良さには自信があるのに売れない」というケースです。これは、売る側が「良い」と思うポイントと買う側が「欲しい」と思うポイントがずれているからです。

 

例えば、世界一小さい携帯電話の端末を開発したとします。大きさは、既存端末の半分でバッテリーも長時間駆動。実現するにはものすごい技術力が必要です。では売れるか、というと売れません。画面が小さすぎて使いづらいからです。『良い』と『欲しい』とは意味が全く違うのです。

 

また、「自分はお客さんの欲しがるものを作っている」と思っていても、実際にはプロダクトアウトに陥っている可能性があります。特に、県外進出する企業は、生産地(沖縄)と消費地(県外)が物理的に離れています。市場ニーズは刻一刻と変動しますが、年に何回程、消費地に足を運んでいるでしょうか。また、消費地に幹部クラスを常駐させているでしょうか。

 

市場を知る努力をすることなく「自分はお客様のニーズが分かっている」というのは、単なる思い込みに過ぎません。

 

売れている商品と売れる商品は違う

 

次に、マーケットインについて考えます。これは、「お客様が望んでいる商品を作って売る」という経営スタンスです。これに異論を唱える人は少ないでしょう。

 

ただ、注意が必要なのは、周囲で売れている商品を、ただ何の考えもなく取り入れても成功しないという事です。

 

他社商品の猿真似ではうまく行かないのは当然として、世の中で既に認知されている商品は競合が多く、少しくらい差別化をした程度ではなかなか競争に勝てません。それなりの人材、設備、資金(経営資源)を投入して臨む必要があります。

 

いくらお客様が望んでいる商品カテゴリーであっても、それに無節操に参入する訳にはいきません。さもないと『自社らしさ』が失われ、何もかも中途半端になってしまいます。『マーケットイン』や『お客様ニーズ』という言葉に踊らされていてはいけないのです。

 

事業ドメインをしっかりと保つ

 

経営のやり方としては、『自社らしさ』を保ちつつ、その範囲内でお客様の視点に立ってニーズを知り、それを満たす努力を続けるのがベストです。『自社らしさ』というのは事業ドメイン(領域)の事です。事業ドメインとは、『誰に』『何を』『どのように』提供するかを定義したもので、平たい言葉で言えば『自社の土俵』です。

 

事業を成功させるには、自社の強みを認識し、それを強化するために継続的に人材強化や設備投資などを行っていかねばなりません。これには長い目で見た取り組みが必要です。

 

いくら、お客様が望んでいても、自社が得意でない事には手を出すべきではありません。お客様のニーズを満たせるだけのシーズが自社に有って初めて、ビジネスが成立するのです。

 

社内をどのように統制するか

 

一般的に、営業職はマーケットインの考え方を、技術職はプロダクトアウトの考え方をします。営業職と技術職のどちらが社内で発言力を持っているかが、その会社の雰囲気がプロダクトアウトなのかマーケットインなのかに影響します。

 

単純にマーケットインが良いとは言えません。必要なのは『事業ドメインに則したマーケットイン』です。よって、営業職の声だけでなく、技術職の声もまた大切なのです。

 

そして意見対立しがちな営業職と技術職を協働させることが経営者の役割であり、その為には、経営ビジョンや事業ドメインを社内に明示すことが重要です。

 

(那覇商工会議所・商工ニュース2008年8月号掲載)

 

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