ヒント(56) 給与体系とモチベーション

企業にとって従業員の給与は難しい問題です。給与が低いと人材が集まりにくく、離職率が高くなります。そうかといって、高い給与が必ずしも高い成果に繋がるとは限らず、人件費が負担になる事もあります。

 

従業員にいくら給与や賞与を出せばいいのか、という問題は、多くの経営者に共通する悩みでしょう。

 

給与と満足度の関係

 

従業員にとって、給与には二面性が有ります。一つは『生活の糧』であり、もう一つは『評価指標』です。

 

人が仕事をする目的は、根本的には生活費を稼ぐ為です。その為、従業員にとって「生活できる給与かどうか」は大問題です。これを満たしてないと、他に給与条件の良い仕事が有れば転職するでしょう。

 

では、生活に必要な給与以上であればそれで問題ないかと言えば、そうではありません。

 

従業員は『生活の糧』としての目的が満たされると、次は『評価指標』としての給与額に目を向けます。

 

すなわち、自分がこなしている仕事の難易度、負担、労働時間、成果などに対し、給与の額が妥当かどうか天秤に掛けます。その際、他の従業員や業界平均、過去の自分などを参考に『適正金額』を自分なりに計算しています。

 

実際の給与がそれよりも高いと「自分は評価されている」と満足し、そうでなければ、「努力が認められていない」「割に合わない」と不満を持つのです。

 

給与の満足度は、『生活』と『評価』のどちらが問題なのかを区別して考えなければなりません。

 

給与体系の整備が必要

 

大企業や公的機関は給与体系が明確になっていますが、規模の小さな企業では、給与体系が不明確であったり、経営者の思いつきで給与を決めたりする事が多いようです。

 

給与の決め方には一定のルールが無ければなりません。さもないと、従業員間で給与額の不整合が生じ、嫉妬などからチームワークが弱くなる事があります。

 

また、給与は上げるのは簡単ですが、下げるのは大変です。更に、給与増額の満足は続かず、モチベーション向上効果も期間限定ですが、人件費負担はずっと続きます。よって、少し利益が出たからと言って、思いつきで給与を増額する訳には行きません。将来の損益をシミュレーションした上で、計画的に実施する必要があります。

 

ついでに言えば、優秀な人ほど、自分の人生設計をしますので、「どうすればいくら給与が増えるのか」に強い関心を示します。経営者は、その質問に答える義務があります。さもないと、良い人材を繋ぎとめておく事は難しいでしょう。

 

給与を決める要素

 

給与体系には、色々な方法論がありますが、基本的には、『会社への貢献度』で決めます。

 

こう書くと、成果報酬をイメージされるかも知れません。結果を出した人が多く受け取るのは、ある意味で理にかなっています。ただ、成果報酬の色が強すぎると、短期志向や個人プレーに陥る危険性があります。また、歩合制は毎月の手取りが安定しない為、精神状態も不安定になりやすい事が指摘されています。ほどほどが大事です。

 

年功序列は、在籍期間に比例して能力が高まる事を前提とした制度です。中高年の従業員への適用は弊害の方が多いのは周知の通りです。しかし、若手社員にとっては、先の『前提』を満たしますので有効です。

 

中堅以上については、個人成績よりも果たしている責任の大きさで貢献度を見ます。特に管理職は、部門成績が給与に反映するようにします。組織の上に行けばいく程、成果が問題にされるのは当然の事です。

 

給与は最終的には「その人をどう評価するか」に行きつきますが、人が人を評価するのに絶対は有りません。給与体系だけで全てを解決するのではなく、給与の増減について、従業員とよく対話し、長期的に納得を引き出す事の方が大切です。

 

財務との関係

 

給与は人件費ですから、財務とのバランスにも考慮が必要です。

 

給与が増やすと社会保険も増えます。利益が無いのに賞与を出すと資金繰りが悪化します。退職金制度を設ける場合は、積み立てが必要です。

 

満足度で言えば、給与増額が全てでなく、休みを増やしたり福利厚生を充実させたりする方法もあります。

 

(那覇商工会議所・商工ニュース2009年11月号掲載)

 

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