ヒント(60) 事業承継が企業を永続させる

企業は生身の人間とは違い、永続する事を前提としています。また、従業員や顧客、協力業者の為にも永続させなければなりません。

 

一方、社長は生身の人間であり、経営できる期間には限りがあります。そこで、社長は一定の年齢に達すると、次の世代に事業を引き継ぐ『事業承継』をしなければなりません。

 

もし、社長の後継者がいなかったら、その企業は廃業するか売却するしかありません。実際、近年廃業に追い込まれた企業の4分の1は、後継者不在を原因に挙げています。

 

後継者選びは早く

 

後継者の選定と育成は社長の最も重要な仕事の一つです。また、最も長期に渡る仕事です。その大変さは管理職育成の比ではありません。プロの経営者を外部から迎えるのなら話は別ですが、普通は社員が社長になるには最低5年、できれば10年の準備期間が必要です。

 

よって、経営者は自分の体力や健康に不安を覚えてから慌てて事業承継に動くのではなく、若くて元気なうちから『次』を考えて準備しておかねばなりません。

 

後継者候補は一人ではない

 

中小企業の業績は社長の力量で決まります。経営能力のない人物が社長になるとほぼ間違いなく業績が悪化し、最悪の場合、経営破たんする事もあります。よって誰を次の社長にするのか、は非常に重要な事です。

 

ちなみに、従来は自分の子を次の社長にする事が多かったのですが、今では親族内承継は全体の4割に留まっており、「経営者として相応しい人物に引き継いでもらいたい」と考える社長が多いようです。

 

ただ、親族外に事業承継するには、保証人問題が付いてきます。これがネックにならないよう、借入金の返済計画も含めた事業承継プランは早めに作成する事が大切です。

 

創業者と後継者は違う

 

創業者も後継者も経営者である事には違いありませんが、置かれている立場や背景が違います。

 

何もない所から事業を立ち上げた創業者とは違い、後継者は創業時の苦労を体験していません。その為、経営理念の受け止め方が浅かったり、誤解したりする傾向があります。また、引き継いだ事業を重く受け止めすぎて、必要以上に守りに入るケースもあります。

 

さらに、創業者は最初から社長ですが、後継者は社長になるまでは社員である事に注意が必要です。社員から社長への意識の切り替えは、簡単な事ではありません。

 

また、通常は後継者よりも社歴が長い古参社員がいる為、うまく体制を作らないと社内をまとめづらいのも後継者の特徴です。

 

後継者に必要な資質

 

後継者に必要な能力を一言でいえば『経営能力』ですが、それをもう少し掘り下げてみたいと思います。

 

(1)決断力
決断力の無い社長は会社を潰します。上司がいる社員とは違い、社長は会社の重要事項を自分で決断しなければなりません。また、決断結果が適切でなければなりません。決断力は社長にとって決定的に重要な資質であり、頭の良さだけではなく精神力も要求されます。

 

(2)リーダーシップ
自分の先輩も含め、多くの社員を率いていくには相応のリーダーシップが必要です。理念をよく理解し、適切な経営目標を掲げ、会社の方向性を明確に示せる力が必要です。また、社員に厳しく接しながらも信頼されるだけの『器』も不可欠です。

 

(3)営業力
社長に営業意欲や営業力が無ければ、どんなに営業力のある社員がいても監督し切れず、会社の売上高が低迷します。後継者が技術畑出身でも一定期間は営業経験を積ませるべきです。

 

(4)財務能力
社長が財務に疎い丼勘定の経営では会社にお金が残りません。過剰投資や過剰コストで会社を潰すか、攻めの投資ができずに会社をジリ貧に追い込むかのどちらかになります。

 

(5)業務知識
社長は現場の業務知識を詳細に知らなくても、全ての部門責任者と『会話できる』レベルには達している必要があります。社長に苦手分野があると、そこがネックになって経営判断が歪みます。

 

後継者がこれらの力を身につけるには時間が掛かります。だから早期着手が大切なのです。

 

(那覇商工会議所・商工ニュース2010年3月号掲載)

 

一覧表に戻る