ヒント(62) 社員に危機感を持たせるには

ある経営者からのご質問
業績が落ちてきているので現場にハッパをかけていますが、なかなか社員が危機感を持って動いてくれません。どうすれば危機感を持たせる事ができるでしょうか。

 

<回答>
社員が危機感を持たないのは現状に困ってないからです。つまり「今のままでも何とかなる」と思っているのです。

 

そもそも、社長と社員で危機意識に温度差があるのは、見ている数字が違うからです。

 

社員は資金繰りを知らない

 

社長が会社の先行きに不安を感じるのは、資金繰りを見ているからです。売上高が下がり赤字になると資金が回りません。会社の預金残高が減っていき、支払いが厳しくなっていく恐怖は体験した人にしか分からないでしょう。

 

しかし、社員は自社の預金通帳の金額は知りません。せいぜい経理担当くらいでしょう。資金繰りが厳しいという事も知りませんし、そもそも「資金繰り」の意味さえ知らない社員の方が多いでしょう。

 

よって、社員が社長ほど危機感を持たないのは、ある意味当然なのです。社長がいくら「このままでは危ない」と繰り返し言っていても、給与はいつも通り支給されています。社員は「また始まった。社長はいつもああ言っているが、今回も何とかなるだろう」と考えるものです。

 

もちろん、本当に切羽詰まって給与の支払いが止まれば社員も流石に危機感を持つでしょうが、そこまで行くと手遅れです。

 

何人が経常利益を知っているか

 

社員に会社の通帳を見せる訳にはいきませんので、資金繰りの次に重要な数字である『利益』を社員に認識してもらう必要があります。

 

業績が悪い会社ほど、利益の金額に無頓着です。中には社長ですら月々の経常利益を把握していない会社もありますが、それは論外です。それでは手の打ちようがありません。業績が厳しいのを景気や他人のせいにし続けながら近い将来、経営破たんしていくのでしょう。

 

問題は「社長は経常利益を把握しているが、幹部社員がそれを知らない」というケースです。

 

この場合、幹部社員は会社の数字をどこまで知っているでしょうか。売上高すら知らないのでは危機感を持ちようがありません。粗利益くらいまでは知っていて欲しいものです。会社の粗利益も把握していない人は、そもそも『幹部』ではありません。

 

それでは、粗利益まで知っていれば良いのでしょうか。そうではありません。なぜなら、粗利益は「常に黒字」だからです。

 

経常利益は、黒字もあれば赤字もあります。黒字だとしても、粗利益のように何千万円も出ないのが普通です。赤字にならない数字(売上高や粗利益)だけを見せていても危機感が生まれにくいのです。これが社長と社員の温度差の原因です。

 

社員に危機感や経営参画意識を持ってもらいたいのなら、まずは幹部社員に会社の経常利益の数字を知らせ、常に意識させる事です。数字は見せるだけでは駄目です。覚える位でないと意味がありません。

 

部門ごとの経常利益を示す

 

ここまでが半分です。まだ先が有ります。社員は社長とは違って会社全体を見ている訳ではありませんので、全体の損益だけを見ても、自分の事(責任)とは思いません。

 

そこで、損益計算書を部門単位に作成し、部門の損益計算書を部門長の数字として持たせるのです。

 

経営意識や危機感は、『資金繰り』と『経常利益』に責任を持つ事から生まれます。それならば、管理職に、本人が管理する部門の損益計算書を持たせればよいのです。資金繰りについては、部門のキャッシュフローで代替できます。

 

管理職に自部門の損益計算書を持たせ、部門の経常利益とキャッシュフローを改善する責務を持ってもらう訳です。そうすると、その管理職は自分の部門を『経営』するようになり、危機感が生まれてきます。また、それが一般社員にも伝わっていきます。

 

(那覇商工会議所・商工ニュース2010年5月号掲載)

 

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