ヒント(64) 価格の付け方を間違えると首が締まる

ある経営者からのご質問
個人向けのサービス業を開業しました。チラシを配ると店には来てくれるのですが、いざ申し込みを勧めると「高い」と言われます。価格を下げた方がいいでしょうか。

 

<回答>
価格を下げると利益率が下がりますし、一旦下げた価格を元に戻すのは大変です。価格の付け方は経営に大きく影響しますので、よく考えて価格設定する必要があります。

 

価格を下げて儲かる場合

 

一般的に、価格を下げて儲かるのは薄利多売が成立する場合です。似たような商品やサービスであれば、客は安い方に流れますので、価格を下げると客数は増えます。

 

値下げをして粗利益率が半分になっても、客数が3倍になれば粗利益は1.5倍になり利益が出ます。いわゆる量販店はこのやり方で収益をあげています。

 

ただ、このやり方が成立するのは『多売』が実現できる場合に限ります。これには2つの条件があります。

 

一つには、店の集客力が高いことです。集客力の低い店が安売りをしても客数は大して増えません。ただ利益を削るだけです。

 

もう一つは、多売に対応できる供給力があることです。駐車場が何千台もある大型店なら、客が相当増えても対応が可能です。

 

しかし、店の収容力があまり多くない場合はそうではありません。収容力以上に客を受け入れる事はできません。収容力のせいぜい8割くらいで客数は頭打ちになります。

 

バタバタ貧乏が恐ろしい

 

サービス業では、サービス提供者の持ち時間で供給力が決まります。それ以上は『忙しくて対応できない』という頭打ち状態になります。

 

その際、サービス提供者がフル回転しているのに、客単価が安くて利益が出なかったらどうでしょうか。どれだけ忙しく仕事をしても儲からない『バタバタ貧乏』の状態です。

 

サービス業で怖いのは『仕事がなくて暇』という事ではありません。それなら集客や受注活動を頑張ればいいだけです。

 

本当に怖いのは『忙しいのに儲からない』という状態です。これは、手の打ちようがなく、八方塞がりです。なぜそうなるか。持ち時間や受入能力が、それ程多くない事を考慮に入れず、安易に安く販売・受注するからです。

 

多売ができない事業者は薄利では勝負できません。適正利益を考えて価格をつけないと店が傾きます。

 

高いという根拠は何か

 

価格が「高い」とか「安い」というのは相対的なものです。つまり、客は頭の中で何か別のものと比較して「高い」と言っているのです。

 

問題は、あなたが提供するサービスが何と比較されているか、です。

 

今は、どの分野でも『良いものを安く』が当たり前になっています。しかし、本当に良いものには希少価値があり、手間暇もかけますので高くて当然です。また、それにお金を出す客層は必ず存在します。

 

もし、あなたが提供しているサービスがどこにでもある程度なら、相場に合わせざるを得ません。「高い」という客の声が正しいです。

 

しかし、素晴らしいレベルのサービスであるならば、価格が高いのではなく、サービスの価値が客に伝わってないだけです。

 

客に似たようなサービスと同程度だと思われているから、それらの価格と比較されて「高い」と言われるのです。値下げを検討する前に、どうすればサービスの価値が客に伝わるかを真剣に考えるべきです。

 

全ての人が客ではない

 

事業で大切なのは『価値を分かってくれる人』と『分かってくれない人』を区別することです。価値を分かってくれない人は「高い」と言います。そうした人の声を必要以上に聞きすぎると振り回されます。

 

価値を分かってくれる人は、それに見合ったお金を出します。この人達が対象となる客層です。そういった人が多く現れるまで、幅広く積極的に集客し続ける事が大切です。

 

(那覇商工会議所・商工ニュース2010年7月号掲載)

 

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