ヒント(65) 新事業として何をすべきか

ある経営者からのご質問
サービス業を営んでいますが、最近では競争が激しく利益が落ちてきました。そこで、別の事業を立ち上げようと思いますが、どんな事業を立ち上げればいいでしょうか。

 

<回答>
まず最初に、本当に今のタイミングで新事業を立ち上げるべきかどうか、をよく検討する必要があります。

 

「競争が激しい」「利益が減った」というのは、市場が成長期から成熟期に移行したサインです。この段階では、商品やサービスを同業他社と差別化し、経営管理を強化して原価を削減すれば、一定の利益は確保できます。

 

市場が成熟しても、衰退期に入るまでのしばらく間、需要自体は安定します。もちろん、市場が衰退し始めてから事業を立ち上げても遅いのですが、早すぎても駄目です。

 

事業の立ち上げには資金や人材が要りますので、その分、既存事業に投入できる経営資源は少なくなります。色々な事業に次々と手を出した結果として何一つ身になってない企業は決して少なくありません。

 

中小企業は資金も人材も限られていますので、既存事業と新事業のどちらに経営資源を優先的に投入するのか、冷静に考える必要があります。

 

新事業の選び方

 

自社と市場の現状をよく分析した結果、「今のうちに新事業を立ち上げるべき」という結論が出たら、次にどんな事業を立ち上げるかを検討します。

 

事業の選定については一定の基準があります。何となく選んではいけません。事業選定の基準には次の3つがあります。

 

(1)情熱を維持できること
(2)自社の得意分野であること
(3)今後有望な分野であること

 

(1)情熱を維持できること

 

事業の立ち上げには相当のエネルギーが要ります。市場調査を行い、予算を確保し、人材を割りあて、試作品でテスト販売を行い、販売促進をやり、仕組みも作る、という一連の流れは根気が要ります。また、片手間でできる事ではありません。

 

経営者自身が事業に対するモチベーションを数年間は維持できる分野でないと、やがて尻切れトンボになってしまいます。

 

そもそも、経営者には色々なタイプがあります。自分の性格や経営スタイルと合わない事業は、最初から手を出さない方がいいでしょう。

 

(2)自社の得意分野であること

 

基本的な考え方として、事業は自社の得意分野で行うべきです。

 

たとえ、今後の成長分野であっても、土地勘が全くない分野に参入すると、成功ポイントが分からないため、どうしても失敗しやすいです。

 

新事業の立ち上げは、既存事業で培った経験やノウハウ、仕組みを活かせる分野で行わねばなりません。

 

ここで必要なのは自己分析です。自社の一番の強み(生命線)は何か、をよく確認し、それを軸に事業を組み立てる必要があります。さもないと、事業を立ち上げたところで、顧客獲得競争には勝てません。

 

(3)今後有望な分野であること

 

事業は成長性のある分野で行った方が成功しやすいのは当然です。今時そんな成長分野があるのか、と思われるかも知れませんが、探せば有ります。大切なのは、世の中をよく観察することです。

 

また、有望そうに見えても、新規に参入する余地が無かったり、数年で市場が成熟したりすることもあります。そこで、本当に有望なのかどうか、よく市場調査する事が大事になってきます。

 

事業の選択肢は複数持つ

 

最後に大切な事を言っておきます。新事業の選択肢は、必ず2つか3つ持つようにして下さい。

 

最初から事業の候補が一つしかないと、「やる」「やらない」の選択肢しか出てきません。すると経営者は「やりたい」という感情だけで判断しがちです。

 

これは事業道楽の元です。経営の世界では『感情』よりも『勘定』の方が大切です。

 

(那覇商工会議所・商工ニュース2010年8月号掲載)

 

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