ヒント(74) 給与水準は何で決まるのか

ある経営者からのご質問
当社は、業界平均よりも給与水準が低いのか、人材募集に対する応募が少なく慢性的な人材不足状態です。頑張っている社員に報いる為にも、全体的に給与を底上げしたいと思いますが、一方で資金繰りも潤沢ではありません。給与水準と資金繰りの兼ね合いをどのように考えればいいでしょうか。

 

<回答>
給与が低いと人材の質が下がり、人材の質が低いと利益が少なく高い給与が出せない。まさに「ニワトリが先か、卵が先か」で悩む経営者は多いのですが、先に来るのは『労働生産性の向上』です。

 

労働生産性と給与の関係

 

労働生産性とは『一人あたりの稼ぎ』のことです。財務的には、給与水準は労働生産性で決まります。労働生産性の高い会社は、一人あたりの稼ぎが多いので、高い給与を支給できます。

 

一方で、労働生産性の低い会社は業務効率が悪いため、売上高が増えるとすぐに現場が人手不足になります。そうすると、売上増加で増えた粗利益が、既存社員の給与増加ではなく、新入社員の給与に回ります。給与水準はいつまでも上がりません。

 

業務量が増えた時に、簡単に人を増やしていないでしょうか。

 

同じ人数で今より多くの業務をこなして初めて、『一人あたりの稼ぎ』は増えます。一人あたりの業務量が一定のままでは、支給できる給与も一定のままです。当然のことです。

 

労働生産性の意味

 

労働生産性、すなわち『一人あたりの稼ぎ』の『稼ぎ』の意味を考えてみましょう。稼ぎ、とは利益を指しますが、利益には粗利益や経常利益などいくつかの種類があります。

 

ここで言う利益とは『付加価値利益』のことです。

 

付加価値利益とは、売上高から『人件費と機械代以外の原価と販管費』を差し引いた残りです。

 

損益計算書では、人件費と機械代は経費です。しかし、付加価値利益の計算では、人件費や機械代は『社内』とみなし、経費に含めません。

 

そうすると、付加価値利益とは、営業利益+人件費+減価償却費+リース料で計算できます。これが『稼ぎ』です。誰が稼いでいるのか、と言うと人と機械です。

 

この付加価値利益を従業員数で割り算したのが、一人あたりの稼ぎ、即ち、労働生産性です。

 

そして、付加価値利益は、人件費、固定資産への再投資、会社の利益に分配されます。

 

付加価値利益をどれだけ人件費に回したのか、という指標が『労働分配率』です。労働生産性の低い会社は、労働分配率が高止まりしています。つまり、「もうこれ以上、給与にお金を回せない」という状態です。

 

労働生産性を高めるには

 

労働生産性を高めるには、同じ人数でもっと多くの付加価値利益を稼がなければなりません。

 

その為には、「営業マンの一人あたり受注額を増やす」「作業員の一人あたり出来高を増やす」「業務を効率化し内勤者の人数を抑える」といった努力が必要です。

 

営業効率を高めるには、質の高い見込客を数多く獲得し、失注率を下げる事が重要です。また、顧客管理を徹底しリピート率を高めて下さい。

 

作業効率を高めるには、機械やツールを充実させ、作業計画や人員管理を強化して下さい。

 

事務効率を高めるには、役割分担の明確化、整理整頓、優先順位づけ、ソフトの使いこなしが大切です。

 

そして、事業戦略として、労働生産性の高い案件の受注や生産性の高い商品の販売を強化する事が大切です。事業モデルが悪いと、現場がどれだけ頑張っても労働生産性が上がらない事もあります。

 

更にもう一つ。経営資源はヒトだけではありません。モノ(機械、システム、チラシ、ウェブサイトなど)をもっと活用して下さい。

 

労働生産性が上がれば、給与水準を無理なく上げられます。優秀な人材の獲得や育成に資金を回して、更に利益が増える循環を作って下さい。

 

(那覇商工会議所・商工ニュース2011年5月号掲載)

 

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