ヒント(76) 経営幹部を育成するには

ある経営者からのご質問
当社には管理職が何人かいますが、現場の事で精一杯で、経営幹部としては力不足です。どのようにすれば、経営幹部を育てられるでしょうか。

 

<回答>
管理職を経営幹部に育てるには、まず管理職と経営幹部の違いを知る必要があります。

 

管理職の仕事は、営業や生産、総務などの業務を管理する事です。一方で、経営幹部の仕事は、経営者を支える事です。

 

管理職と経営幹部は、同じ人が兼ねる事があるものの、役割はそれぞれ異なります。

 

ただ、管理職経験の無い人を経営幹部にする訳には行きませんので、まずは管理職の育成が先決です。

 

まずは管理職を育てる

 

中小企業では、現場業務に長けた社員を管理職にする事が多いです。その際、多くの新任管理職が突き当たる壁は、部下に仕事を任せて育てる難しさです。

 

自らが個人的に成果を出す事はできても、部下に成果を出させるには、指導や管理・監督、環境作りや仕組み作りなどが必要で、一筋縄ではいきません。

 

つまり、自分で成果を出すのと、部下に成果を出させるのとでは、それぞれ別の能力が要求される訳です。

 

この点を踏まえて管理職を継続的に育成しないと、経営幹部の前に、管理職が不足する事になります。

 

ちなみに、管理職が何たるかは、本人を管理職に任命する前に教えておく必要があります。管理職にしてからでは、目の前の業務や目標に追われて、管理職の勉強どころではなくなります。

 

経営と管理は全く違う

 

次に、管理職を経営幹部にするには、経営とは何かを理解して貰わなければなりません。

 

経営とは、

 

(1)会社の目的・目標の達成のため、
(2)方針を立て、
(3)組織体制を整え、
(4)計画的に意思決定を行い、
(5)事業を管理・遂行する事

 

をいいます。

 

中小企業では、経営者が業務管理をするケースもありますが、本来は経営と管理は全く別物です。

 

別物だからこそ、管理職の仕事ができても経営者の補佐(経営幹部)が務まらない人が大勢いるのです。

 

経営者と管理職は視野が違う

 

経営幹部を育てるうえで意識すべきなのは、経営者と管理職の視野の違いです。

 

経営者の頭にあるのは、会社の利益や資金繰り、また、それを良くするための方向性や社内体制などです。そして、経営者が物事を見る単位は『事業』つまりビジネスです。

 

どんな事業を立ち上げ、他社とどう差別化し、競争力を高めるのか。その為には、人材やモノへの計画的な先行投資が必要です。一方で、将来性のない事業からは撤退し、成長分野に経営資源をシフトします。

 

これが経営です。そこに有るのは、常に会社全体を見渡す大局観です。

 

一方で、管理職は営業なら営業、総務なら総務、生産なら生産、と自分が担当している業務しか見ません。また、見なくても業務は回ります。

 

管理職が物事を見る単位は『業務』です。つまり、事業の一部分です。ここが経営者と根本的に違います。

 

一つの事業を任せてみる

 

管理職を経営幹部にするには、視野を『得意な業務』から『事業全体』に広げる必要があります。

 

経営幹部は、営業、生産、総務が幅広く分からないと駄目です。その為には、若いうちに複数の業務畑を経験させる事が大切です。

 

そして、経営幹部には、一つの事業を任せて経常利益で評価する事が重要です。粗利益でも売上高でもありません。経常利益です。損益計算書を背負わない人には、経営者と同じ視点や発想は生まれません。

 

事業を任せるのはリスクがあります。しかし、それを避けていては、いつまでも経営幹部、ましてや社長後継者は育ちません。

 

根気と勇気が要りますが、だからこそ、やり切った会社が勝つのです。

 

(那覇商工会議所・商工ニュース2011年7月号掲載)

 

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